苦労して採用した人材が、育ってきたと思うと退職してしまう。結局、常に採用活動を行うかたちとなり、採用コストはかさむばかり・・・。今、そんな悩みをお持ちの中小企業が本当に多いです。一方で、入社した人材が10年と活躍し続ける、定着率の高い企業があることもまた事実です。この双方では何が違うのでしょうか?この記事では、定着率を上げる方法をご紹介していきます。

定着率とは

そもそも定着率とは、読んで字のごとく、企業に入社した社員が定着している割合を表した指標です。定着率とセットで「離職率」がよく一緒に出てきますが、これとは異なります。定着率とは新人の定着度合いを表したもので、離職率は社歴に関わらず退職する人の度合いを表したものです。

つまり、定着率は噛み砕いた言い方をすると「入社後のギャップがないか」を数値化したものとも言えます。

離職率、定着率の計算方法

それぞれの計算方法を見ていきましょう。

・離職率:(年内に離職した人数)÷(年内の在籍人数)×100

2018年に100名の社員が在籍していたが、10名が離職した場合、上記の計算式になります。

厚生労働省は1年間での計算を行っており、1月1日を基準日に設定しています。しかし離職率の計算に決まった期間はありません。期間によって区切って計算すると、詳細の分析をすることができます。

・定着率:100%ー離職率、もしくは(入社後一定期間で退職した人)÷(一定期間中の入社者人数)×100

定着率は離職していない人の割合になりますので、全体から離職率を引いた数値が割合となります。離職率同様、計算に必要な期間に定めがないため、社歴に関係なく会社に在籍し続けている人の割合になります。入社後間もない方の定着率を見るためには、入社してから3ヶ月、3年など期間を区切り、入社者数の中での内訳を計算しましょう。

期間の定めがない分、ある意味外部への数値の見せ方をコントロールすることができてしまいます。数値の大小だけでなく、期間や会社のフェーズなど、数値を算出した際の特徴までを明記すると詳細の分析が可能です。

なぜ定着率が低くなってしまうのか?その原因とは。

求人原稿や面接と入社後のギャップ

定着率が低くなってしまう、最も大きな要因のひとつです。応募時や選考中に持っていたイメージと入社後の実態との相違を感じてしまって、徐々に会社への貢献意欲が削がれてしまい、早期退職するケースです。組織、待遇、福利厚生、人間関係などギャップを感じるところは人それぞれですが、ミスマッチが起きていることには変わりありません。入社者、採用者双方にとって時間のムダになってしまいますので、極力引き起こさないよう注意を払いたいところです。

原因としては、採用したいあまりに求人原稿の表記を粉飾していたり、いい面を伝えすぎてしまうなどがあります。または、社風に合わないものの、スキルを満たしているのでとりあえず採用したりしてしまうケースもあります。

目先の採用人数だけを追いかけてしまうと、後々ミスマッチが発生します。「この人材を採用することは、双方ハッピーな状態になるのか?」ということを考える長期的な視点が必要です。

待遇面がよくない

ストレートに言うと「働きやすいと思えない」と退職に繋がるケースです。給与の他に、働き方や福利厚生などに不満を感じてしまうこともあります。ご家族がいる場合やフレキシブルな働き方を望んでいる方の場合、より良い福利厚生を用意している他社への興味が出てきてしまいます。

最近では働き方改革の影響もあり、フレックス制やリモートワーク、副業OKなど様々な働き方を用意している企業が増えています。入社者が希望している働き方や、既存社員が魅力的に思えるような制度にすると、定着率が上がりやすいでしょう。

会社になじめない

会社の雰囲気や人間関係になじめず、孤独感やギャップを感じて去ってしまう方もいます。面接時、その人のコミュニケーション能力や社風にマッチするかを見極められなかったことで引き起こされてしまいます。見極めだけではなく、社風や会社の雰囲気・カルチャーなどを事前に伝えておくことも重要です。

また、職場の人たちが受け入れに慣れていなかったり、積極的に受け入れる姿勢を持たないと、新しくご入社する方は不安になってしまうでしょう。人事・現場双方が受け入れ態勢を強化し、フォローしていく姿勢が重要です。

会社の方向性に違和感がある

会社が目指す方向と全従業員が同じ方向を向いている、これこそが理想の組織です。しかし、その方向性に納得が行かない場合、本人にとっては苦痛になってしまいます。入社前、事業や組織の方向性についての考えをしっかりと伝えておくことが重要です。

また、会社の目指す方向と既存従業員が違う方向を向いている、と入社後に気づき、理想と違うと退職するケースもあります。優秀な人材が活躍できるよう、健康状態の良い組織体制を作ることが必要になります。

定着率が上がるメリット

採用コストの削減

せっかくコストをかけて採用できたとしても、さらに人件費を割いて教育したとしても、すぐに退職されてしまっては水の泡です。また採用しなければならないので、時間もコストもかかってしまいます。一方で定着率が上がると、当然採用コストはグッと下がります。

また、優秀な人材がいい状態で入社すると、リファラル採用に繋げやすくなります。一般的に、リファラル採用は採用コストを下げながらもマッチした人材を採用できる方法と言われています。紹介の良い連鎖を生み出せると、自然と優秀な人材が集まってくるでしょう。

社内にノウハウがたまる

定着率が上がると、離職率も下がるので、社員の平均スキル向上にもつながります。人の入れ替えも激しくなくなるので、社員が心理的に安定して仕事をすることができます。その結果、社内にノウハウがたまり、ひいては会社全体の売上につながっていきます。

定着率の低い中小企業の特徴

会社のビジョンや理念が社員に浸透していない

社長の思いや考え、理念が社員にまでしっかりと浸透させられているかで、定着率が大きく変わってきます。採用活動は、フロントに立つ採用担当者、上司にあたる人、同僚にあたる人、そして社長が関わる全社プロジェクトと言っても過言ではありません。採用に携わる人々が、同じ方向を向いて仕事ができているか、というポイントが非常に重要になります。

彼らの発言に一貫性があれば、応募者・入社者にはそれが魅力的に映ります。しかし、それらにばらつきがあったり、矛盾が感じられる発言があるとギャップに感じられてしまうでしょう。例え社長の発言力が大きいとしても、社員がそれらに共感していない場合はワンマン経営と見られてしまうリスクがあります。

教育する風土がない

社歴の浅いベンチャー企業にありがちです。教育や受け入れの体制が整っていなかったり、メンバーが自身の業務で精一杯になり、新入社員が置いていかれてしまったりします。教育制度や風土が整っていなくとも、フォローする体制だけは作ったり、新入社員からのフィードバックを受けながら体制を強化していくことが必要です。

ベンチャー企業で社員人数が増えていくことが予想されるのであれば、中途入社者が増えてからあわてて教育体制を整えるのでは手遅れになってしまいます。体制がない場合、メンター制などを使いながら教育制度を整えましょう。

社員たちがやらされ仕事で動いている

社員が仕事をやらされている、働かされている、とやりがいのない状態の会社は定着率が低いです。モチベーションが低い状態だと、新入社員に対して貢献意欲も湧きません。新しい環境に期待している新しいメンバーには、その環境が魅力的だとは思われないでしょう。

定着率を高める方法

では定着率を上げるには、どのような対策を取ればよいでしょうか?

入社前と入社後のギャップをなくす

最も簡単に定着率を上げる方法がこちらです。そして、中小企業がまずすべき施策になります。

具体的な方法としては、求人広告への記載内容、面接内容で入社前と入社後のギャップをなくす工夫が必要です。たとえば、面接内容において会社のいいところを伝えるのと同時に、課題やその対策を伝えることも効果的です。

例:「今はこのような背景で○○という課題が生まれているのが正直なところです。ただ、△△の対策を試しているところで、××の結果が出ているので、もう少し様子を見ながら対策方法をブラッシュアップしていこうとしています」

入社後のフォロー体制を整える

入社した社員が数ヶ月間の間に「ほったらかし」「おいてけぼり」と孤独を感じてしまわないように、フォローをしましょう。体制が整っていないのであれば、せめて教育係・メンターをつけるなど、困った時に気軽に声をかけられる人がいる状態にしましょう。

受け入れる体制が整っている状態が非常に理想的ですので、研修が終わった社員にアンケートを取ってみるのもよいでしょう。

自然とフォローし合える風土を構築する

根本的に、部署関係なく自然とフォローできる風土を作っていくことができれば理想的です。これには少し時間がかかるかもしれません。なぜなら「自分が入った時に、こんなフォローをしてくれたことがありがたかった」などの経験から生まれる風土だからです。

例えば、部署関係なく積極的に新入社員のフォローを呼びかけたり、ウェルカム時にはランチや歓迎会を開くなど、互いにオープンになりやすいイベントを作っていくやり方もあるでしょう。

まとめ

定着率についてお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか?人材の獲得自体が難しいマーケットにおいて、せっかくの入社者を手放してしまうことは会社の機会損失につながってしまいます。会社、入社者双方が幸せな状態になれるよう、自社の採用活動やフォロー体制などを見直してみるのも良いかもしれません。

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