現在の日本において労働人口は減少傾向にあり、少子高齢社会がますます加速していく中ではこの流れを止めることはできません。多くの企業では労働力を確保するために激しい競争を強いられています。当然のことながら、より良い待遇の企業に優秀な人材は集まってきます。しかし一方で、大企業ほどの資金力がない中小企業にとって人材確保は死活問題。そんな時代の中で、中小企業が優秀な人材を確保していくためにどのような行動をしていくべきなのか、今回の記事を参考にしていただければ幸いです。

今の求人市場は完全な売り手市場

かつての日本は長年にわたって不況が続き、企業は自らの組織が生き残るためにさまざまな取り組みを行ってきました。中でも多額の人件費を抑制するため、中小企業の中には長年にわたって新卒採用を行わずに、即戦力を求めてスキルのある人材を採用する傾向が長く続きました。いわば求人市場においては企業側が有利な買い手市場の状況だったのです。

しかし、徐々に景気が上向き、モノが売れるようになると需要が増え、人員不足になる傾向があります。これは過去何度も繰り返されてきた歴史でもありますが、ここ最近の売り手市場の要因には少子化もあります。大卒者の数は年々減少し、さらには「大企業=安定」というイメージが必ずしも通用しなくなっている昨今、さまざまな価値観を持って就職活動を行う若者も少なくありません。

定年までひとつの会社で勤め上げるという親世代の常識はもはや通用しなくなっており、転職や起業、フリーランスとして活躍することを前提に考えるケースも多いのです。就職活動において、今までは企業が人を選ぶことに主眼が置かれてきた傾向にありますが、現在は全く逆の状況となっているといえます。加えて、優秀な人材はより待遇の良い大企業を優先する傾向にあり、複数の内定をもらいながら企業を見定めています。仮に大企業と中小企業の内定をもらっている学生の場合、待遇の良い大企業を実際の就職先に選ぶことも多く、実際に中小企業の6割が人手不足に陥っているという現実もあります。

それでは、このような売り手市場の中で中小企業はどのように人材確保を行えば良いのでしょうか。

人手不足の解消法

既存スタッフの業務効率化

人手が足りない場合に真っ先に考えるのが採用活動ですが、それ以前に本当に人材が足りていないのかを改めて検討してみましょう。業務内容のムダはないのか、適切な人材が適切な部署に配属されているのか、業務の偏りはないのかなど、見極めるべきポイントは数多くあります。

これらの内容を見極めることによって一人ひとりの生産性が上がり、人手不足が解消されるケースもあります。最近ではAIやロボットなどの最新テクノロジーの発達により、これまでの業務を機械に行わせることも可能になってきています。

人材採用

業務効率化を検討しても人手不足が解消できそうにない場合、人材採用は最も有効な手段です。足りない部分を人手で補うという非常にシンプルな方法ですが、短期的に見て即効性があり、時間が限られている場合に人材採用は有効な方法といえます。

定着率の向上、離職率の低下

人手不足を解消するための3つ目の方法として、離職者を少なくするという取り組みも重要です。企業の中には採用活動には熱心に取り組むものの、その後の従業員のアフターケアや教育を蔑ろにするケースも少なくありません。

せっかく採用活動によって人材を確保したにもかかわらず、企業の待遇や労働環境が悪く辞めていく人も最近では多い傾向にあります。できるだけ長く働き続けたいと思ってもらえる姿勢を打ち出すことで魅力的な企業に変貌し、従業員の離職率が著しく低下していくことは珍しくありません。

人手不足に悩む中小企業の多くに共通する特徴

給与が低い

求人を出してもなかなか人が集まらない場合、給与が見合っていないケースが多いです。空前の売り手市場の現在、優秀な人材には多くの企業から声が掛かります。求職者にとって企業を選ぶ際、やりがいのある仕事や自分のスキルを活かせる仕事という点を重視するケースも多いですが、それらはあくまでも一定の給与水準をクリアしたうえでの条件です。

都心と地方では給与の格差があり、地方においては年収ベースで200万円や300万円といった例も少なくありません。経営者にとっては、そもそも自社の利益自体が少ないため社員に還元したくてもできないといった事情があることも事実です。しかし、求職者にとって給与はその後の生活水準に直結する最も重要な部分である以上、低い給与条件で働き続けることはリスクでしかないのです。

勤務時間が長い

働き方改革が叫ばれる昨今、未だに長時間労働を強いる職場は少なからず存在します。毎日残業続きでプライベートな時間を取ることができない職場は、特に若い求職者から敬遠されがちです。一方で、残業代を稼ぐために毎日残業を行っている労働者も多いこともまた事実です。

しかし、求職者からは、そもそも長時間労働をしなければ生活に困窮するレベルの給与水準であると見なされ、ネガティブな印象を持たれてしまいます。最近では副業を解禁する企業も徐々に増えてきており、本業は定時に切り上げて、空いた時間を副業に活かすという労働者も少なくありません。

従業員の残業に頼り、長時間労働を前提としたビジネスモデルのうえに成り立っている企業や事業は、求職者の側から見れば将来性がないと見なされることもあるのです。

残業代の未払いや残業規制時間をオーバーするような違法残業はもってのほかですが、定時になっても誰一人帰宅することがないような職場は、若い求職者から強く警戒される傾向にあります。

また、残業時間そのものが短いとしても、夜勤や早朝勤務などが混在する不規則な労働時間も良いイメージを持たれません。

人間関係に問題がある

転職者にヒアリングを行うと、前職を辞めた理由の中に人間関係という事柄が必ずといっていいほど存在します。転職者の動向を知ることは雇用の安定を目指すうえで大いに参考になるものです。

一口に人間関係といっても、上司との反りが合わない、パワハラやセクハラ、同僚からの嫌がらせなど、さまざまな要因があります。

人間関係は職場の雰囲気によっても大いに左右されるものです。自分の意見が通りづらい風通しの悪い職場や、上層部からの強い圧力によって抑圧されている環境、過剰なノルマが課されている職場においては、従業員は常に強いストレスを受けます。それがひとつの要因となり、職場内における人間関係のトラブルに発展します。

待遇面の弱さ

給与の低さにも直結する部分ですが、従業員に対する福利厚生などの待遇が悪いことも人手不足に関係してきます。給与や待遇面の良し悪しは、企業が従業員をどのように扱っているかを知るためのパラメーターでもあります。

従業員を使い捨てるような代替の利く駒としか思っていない企業は、人件費を単なるコストとして考えがちです。教育体制やアフターフォローの体制が皆無に等しく、人を育てることを半ば放棄しています。

本来、従業員は企業にとっての貴重な財産であり、従業員なくして企業の存続はあり得ません。従業員にとって働きやすい環境を整え、待遇面でサポートするのも経営者の重要な役割です。

最近では副業の可否や育児支援制度、テレワーク制度の有無などを重視する求職者も増えています。

中小企業が特に意識すべき対策

大企業と中小企業では優秀な人材を確保するための戦略が異なります。大企業の場合、新卒採用から人を育て上げ、自社で通用する人材を作ることが可能です。しかし中小企業の場合、新卒採用で一から育て上げるための時間や費用的な余裕がないケースも多いです。

中小企業は、まずは優秀な人材をいち早く確保するということが先決です。大企業とは違い、中小企業は少数精鋭で競争を勝ち残っていく必要があります。できるだけ人を多く雇うのではなく、会社にとっての核となるような人材を確保し、徹底的に効率化を図りながら利益を追求していくことが求められるのです。経営の効率化という点では、人材の確保だけではなく経営方針全体にも直結するテーマといえます。

中小企業が良い人材を確保するためにやるべきこと

中小企業にあって大企業にはない魅力があります。それは、業務の裁量権の大きさです。部門によって細分化されがちな大企業の組織に比べて、中小企業の場合はさまざまな部門が横断的に業務を行うケースが少なくありません。業務全体を把握し、さまざまなノウハウを得ることができるという点は、決して大企業では経験できないことであり、中小企業で働く大きなメリットであるといえます。

やりがいのある仕事内容をアピールするためには、まずは今回ご紹介してきたような給与、労働時間、待遇面などの人事的な制度を見直すことも検討しましょう。裁量権が大きいということは、裏を返せば責任も大きくなるということです。責任の大きさに応じて適切な給与体系や待遇を用意することは当然のことです。

大企業に勝るような給与が用意できない場合は、副業の解禁やテレワークの環境を整えておくのも非常に有効です。特に優秀な従業員は、多少給与が下がったとしても副業や働き方の効率化でリカバリー可能だと考える人も多いものです。副業やテレワークの推進は中小企業の中で実施している企業も少なく、今のタイミングだからこそ他社と差別化できる大きなポイントです。給与のように金銭的負担も少ないため、今後の中小企業の人事戦略としては非常に重要で効果の高い施策といえるのです。

まとめ

中小企業の中には慢性的な人手不足に悩む経営者も多いです。給与を上げれば人は集まってくるとわかっているものの、利益や売上が低いなかで安易に上げることはできないというのも当然のこと。しかし、今回ご紹介してきたような中小企業だからこそ可能な人事戦略は、給与の良し悪し以上に重要視されてくる要素かもしれません。

いち早く画期的な人事戦略を打ち出すことは、その企業の革新性や挑戦的なイメージをアピールするうえでも有効な方法です。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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